呉七クロッシング #3:呉服町 茶ベニュー その2

「ななや」の母体である丸七製茶は創業1907年なので、100年以上お茶を扱っていることになる。1988年に静岡で初めて抹茶を製造したとのことで、歴史がある中でも新しいことに積極的に挑戦する会社らしい。リーフ茶の価格が低下を続けていることを考えると、価格が維持できる抹茶をラインナップに加えることは経営的な安定をもたらすと言う利点もある。「ななや」店舗の名物は世界で一番濃い抹茶ジェラート。改革の積み重ねで商機を掴むスタイルのようだ。

ななや静岡店が青葉町から呉服町に移転したのは2020年10月、GOOD TEA LAB. the SHOP が静岡伊勢丹にオープンしたのが8月なので、今年後半、立て続けに2つのお茶のお店が呉服町にオープンしたことになる。呉服町がお茶のアベニュー=茶ベニュー化している。

ななや静岡店に入るとまず驚くのが、お茶のお店として頭に浮かぶ雰囲気とは真逆のスタイリッシュさだということ。GOOD TEA LAB. the SHOP がお茶のセレクトショップだとすると、ななや静岡店はお茶のスーパーマーケット。お茶関連の品物が壁面に所狭しと並んでおり、アメリカのスーパーマーケットを思わせる。

冷蔵コーナーが充実していることもスーパーマーケットっぽさを後押ししている要因の一つだろう。

なんと、一番茶を使ったペットボトルのお茶が!「茶摘みの朝月緑茶」という商品。飲んでみたが、普通のペットボトルのお茶では感じられない、ジャスミンティーのような香り高い味わい。

店舗2階はイートインスペースと、今はまだオープンしていないが、お茶のテイスティングコーナーがある。お茶をより美味しくいただくためにワイングラスで飲むという趣向らしい。確かに香りと味、色を楽しむためには、ワイングラスが合っているように思える。ただし冷茶に限るか。

このお店に来たからには食べておかなければいけないもの。それが「世界一濃い抹茶ジェラート」。濃さの段階が選べるが、一番濃いものを注文する。確かに「濃い!」。店内で食べるのも良いが、晴れていれば近くにあるハニカムスクエアで食べたい。外で食べるお茶スイーツはまた格別なのだ。

魅力を増す、呉服町 茶ベニュー。次回は「MARUZEN Tea Roastery」を紹介したい。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

ななや 静岡店

静岡市葵区呉服町2丁目5-12
11:00~19:00
ななや 静岡店

呉七クロッシング #2:呉服町 茶ベニュー その1

ニューヨークを地図で見ると南北に走る通りがアベニュー、東西に走る通りがストリートとなっている。静岡市にこれを当てはめるのはなかなか難しいが、駅から北西側に伸びる道がアベニュー、北東から南西に伸びる道がストリートという関係だろう。

御幸通りや人宿町が御幸アベニュー、人宿アベニュー、江川町通りや本通りが江川ストリート、本ストリートになる。駿府城を中心に考えるとアベニューとストリートの関係は逆になるが、繁華街の形を見ると駅中心の方がしっくりくるように思う。

GOOD TEA LAB. the SHOP リアル店舗がある静岡伊勢丹。その静岡伊勢丹・玄関前の交差点を走る2つの通り、呉服町と七間町を上の関係に当てはめると、呉服アベニュー、七間ストリートとなる。七間町がアートの町と考えるとストリートと言う呼び方は違和感がない。CCC(静岡市文化・クリエイティブ産業振興センター)以外にもギャラリーのようなものが増えれば、盛り上がって来るような気がするのだが。

さて、呉服アベニューである。人通りが多いとはいえ、駅前に商業施設が集積したため、若者を中心とした往来客は最盛期より減少している。そのためか空き店舗も増えており、少し寂れた雰囲気も生じている。

静岡伊勢丹に訪問することが増えたこともあり、よく呉服町を通るのだが、意外に目につくのがお茶屋さん。2020年8月にお茶が中心のライフスタイル・セレクトショップ「GOOD TEA LAB. the SHOP」(私たちの店)、2020年10月に美味しい抹茶アイスをはじめとする静岡茶製品を販売する「ななや 静岡店」がオープンし、俄然、お茶の通りとしての存在感が増してきたようだ。

呉服アベニューにあるお茶の店は、前述の2店舗に加え、1781年創業の茶店「竹茗堂」、1865年創業の茶店「小山園」、静岡の製茶問屋である丸善製茶株式会社が運営するティージェラートカフェ「MARUZEN Tea Roastery」の計5店舗。まさに茶ベニュー

竹茗堂

「竹茗堂」は一番老舗だけあって風格のある茶店といった雰囲気。店の作りも昔ながらの茶商店といった趣で、少し工夫をすれば観光客に受けそうだと感じた。

小山園

小山園は店の作りは竹茗堂より小さいが、英語字幕のビデオを流したり、筆書の綺麗なパッケージの「名人茶」を販売していたりと、随所に工夫が見られて面白い。

MARUZEN Tea Roastery

MARUZEN Tea Roasteryは、「煎茶堂東京」や「東京茶寮」を手がけたLUCY ALTER DESIGNが店舗やコンセプトデザインをしただけあって、かなりモダンな店舗。メニューも抹茶アフォガードがあるなど、個性的である。

今の呉服町は、お茶の店を巡るだけでも結構面白い。特に街中でお茶をしたり、弁当を食べたり、休憩したりできる「ハニカムスクエアー」が完成したことで、店舗で買ったお茶ドリンクや抹茶スイーツをテイクアウトしてゆっくり食べることもできるようになったことは大きい。銀ブラならぬ茶ブラを楽しむことができるようになった。

盛り上がる呉服町 茶ベニュー。次回は新店舗「ななや 静岡店」をじっくり紹介してみたい。

つづく

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

シングル・オリジン・ティーを巡る冒険 #4 : シングル・オリジンと UL NDT その2

なぜ野点を行うのか。一番の理由は自分との向き合い。

他の人とピクニックのような野点を楽しむのも良いのだが、一品更屋の野点は独服、一人でお茶を点て頂くスタイルである。場合によっては焚き火で料理をし、自作のシリアルバーを菓子にする。普段は抹茶をいただく。

抹茶の野点の難しいところは、陶器の茶碗を持ち歩くのは重く気を使うことと、茶筅を持ち歩かなければならないということ。ウルトラ・ライト(超軽量)を美しとしていることを考えると道具が枷になってしまう。自由でないのは美しくない。

煎茶の場合はどうであろうか、茶を点てなくて良いので茶碗はいらない。もちろん茶筅もいらない。今回試したように茶葉とクッカーがあれば十分お茶を淹れられるのだから、野点としての美点は煎茶の方が評価できる。

だが問題は味だ。いくらウルトラ・ライトであったとしても、茶の味がまずければ、野点としての意味は薄れてしまう。自然の中に居、自然と対面し、自然を畏怖する自己。その思考と自然を繋ぐ触媒は、自然そのものでありながらすっと受け入れられる味が良い。苦い茶では味に感覚が削がれすぎる。

1回目に淹れた茶は温度が高すぎて苦く感じた。葉桐さんでお茶をいただいた時に感じた味を再現できれば、シングル・オリジンの野点が完成する。ウルトラ・ライトで味も良い野点。更屋流野点の新しいスタイルを完成することができる。

思い切って、葉桐さんでいただいた時のように常温の水を試すことにした。1回目同様にクッカーの蓋に茶葉を広げる。ウォーターバックからチタンカップに水を注ぎ、カップからお茶に水を注ぐ。山並みは横向きの光に照らされて一葉一葉が煌めきを増していった。時間をかけ、茶葉に水が行き渡っていく。

クッカーの蓋から再びチタンカップに注がれる時、水はとろりとした黄色のティーに変わっていた。

「旨い」

出汁のような旨みが口に広がり、香りが鼻腔を通り抜ける。うまみが残りながら緑の清々しさが増し、流れるように味に満たされる。調和。心に自然が流れ込み、自己と自然の調和が為される。人としての生命が自然と一体になることを感じる。水だけでここまでの味が出るものなのだ。

野点のポイントは飲むと言う行為にあるのだろう。自然の中で飲む。コーヒーでも良いのだが、やはりお茶、特に緑茶は調和を感じる。我ここに在り、我ここに在らず。己とは何か。

良いお茶を得ることができたのでアテを試してみる。温泉で購入したアンコウの干物をバーナーの火で炙り焼きにする。これをいただきながら、2煎目、3煎目と続ける。水出しのやまかいは味が落ちることなく飲み進めることができた。

山影が足先まで伸びるとあちこちに暗がりが育ちはじめ、やがて周りの全てを飲み込んで夜が訪れた。降り出した雨は、濡れた地面の匂いをまき散らしながら本降りとなっていく。世界が溶け出していくような激しい雨だった。

私はテントの中の暗がりで、ただ降り続ける雨の音を聞いていた。寝袋の中で、侘と寂をしみじみと感じながらそのまま眠りについた。翌朝、目が覚めると雨は上がっていた。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

Tokyo Ocha Cafe Story #3:THE MATCHA TOKYO 表参道

表参道は流行の中心だけあって面白い店が多い。そんな街もコロナ禍においては大きなダメージを受けており、裏通りを歩くと空き店舗がチラホラと目立つようになってきた。もともとは休日・平日関わらず圧倒的な人出があったものが、突然客が途絶え、それが長引いている。地価の高さからいったら店舗運営が厳しくなるのも当然だろう。

そんな中で、お茶カフェは頑張っている。表参道は面白いお茶カフェが多い。

THE MATCHA TOKYO は、表参道をはじめ、新宿のNEWoMan、ルクア大阪と、良い場所に出店している人気の店だ。抹茶ドリンクを提供はしていてもオーガニックを扱っている店は東京では少なく、宇治、鹿児島、静岡の茶葉のブレンドというのも珍しい。

打ちっ放しを白く塗りこんだような店内は広々としており、正面のカウンターをメインとして椅子とテーブルがまばらに置かれている。カジュアルなカフェの雰囲気である。抹茶のパックも綺麗に陳列され、販売されている。

宇治と鹿児島の厳選した茶葉をブレンドした JAPAN PREMIUM 抹茶をホットでいただく。カウンター中央の釜でお湯が沸いており、柄杓で片口にお湯を注ぎ、一点一点お茶を点てるスタイル。片口から紙コップに抹茶が注がれ完成。仕上がりが茶碗ではなく、紙コップというのが面白い所。妙な和風感を残しすぎず、カジュアルに徹するのは好感が持てる。紙コップでいただく抹茶も美味しい。

知られていないことかもしれないけれど、抹茶も元々は行商や茶屋(現代でいうカフェのようなもの)で飲まれていた庶民のカジュアルなドリンクだった。その後、侘び茶が流行し、禅と結びついて、作法のある現在の茶道に至っている。

抹茶カフェというスタイルは、新しいように見えて、実は懐古的な、先祖返り的なノスタルジーの一つなのかもしれない。当時も疫病が流行ったりしたことだろうから、その合間に薬がわりに抹茶を飲む。時代が変わっても、昔の人と同じように抹茶に癒されている自分がいる。我々が求めるものというのは、本質的には変わっていないのだろう。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

THE MATCHA TOKYO 表参道

渋谷区神宮前6-6-6
11:00~21:00
the-matcha.tokyo