シングル・オリジン・ティーを巡る冒険

美味しい煎茶は、本当に美味しい。その事実だけで歩を進める理由になる。

一品更屋は茶湯文化を研究している。著書である「わび、さび、かわいい 茶ガールの休日」も、タイトルはふざけているように見えるが、茶湯文化を現代の美意識で捉えなおした本である。中国茶研究のために中国の陶芸の大会に参加したり、台湾茶研究のために茶館でひたすらお茶を飲んだりしてきたが、煎茶だけはまだ手付かずだった。

中国で喫茶習慣が生まれ、鎌倉時代に栄西が喫茶養生記を記した後の抹茶文化に興味があった。庶民の間で立ち飲みスタイルの抹茶売りが流行ったり、はたまた闘茶や淋汗茶湯のようなバサラな茶が流行ったりと流行がコロコロ変わるあたりも面白いと感じたし、侘茶から武家茶へ移った後、江戸時代には大衆芸事化し、明治期には作法学習に取り入れられるなどと、奇想天外な話の流れも興味深いものだった。抹茶と茶湯の文化はその時々でスタイルを変えて美を追求する、日本独自のアート文脈と言っても過言ではないだろう。

対して煎茶である。煎茶は江戸時代から歴史が始まり、売茶翁など面白い人はいるものの、大正末期から昭和初期には一般大衆向けの飲料として広がってしまったため、歴史文化的な深みが薄いように感じていた。自分が子供の頃には家の中で普通に飲んでいたもので、今もペットボトル飲料として気軽に飲めるため「近すぎる」という感覚があったのかもしれない。

しかし、静岡でお茶全般を扱うことになって、やはり煎茶の研究も避けられないだろうと感じ、まずは煎茶の最高峰、単一農園・単一品種のシングル・オリジン・ティーを研究したいと考えるようになった。何が最高峰かというのは諸説芬芬あるだろうが、一通り調べてみて興味を持ったのがシングル・オリジン・ティーだったからという、扱く単純な理由だったのかもしれない。

閑話休題。現在の私の煎茶感はどうかというと「旨い!」ということ。ここに至るまでの道程と、その後の変遷について。その冒険について、まとめて行きたいと思う。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

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