Tokyo Ocha Cafe Story #3:THE MATCHA TOKYO 表参道

表参道は流行の中心だけあって面白い店が多い。そんな街もコロナ禍においては大きなダメージを受けており、裏通りを歩くと空き店舗がチラホラと目立つようになってきた。もともとは休日・平日関わらず圧倒的な人出があったものが、突然客が途絶え、それが長引いている。地価の高さからいったら店舗運営が厳しくなるのも当然だろう。

そんな中で、お茶カフェは頑張っている。表参道は面白いお茶カフェが多い。

THE MATCHA TOKYO は、表参道をはじめ、新宿のNEWoMan、ルクア大阪と、良い場所に出店している人気の店だ。抹茶ドリンクを提供はしていてもオーガニックを扱っている店は東京では少なく、宇治、鹿児島、静岡の茶葉のブレンドというのも珍しい。

打ちっ放しを白く塗りこんだような店内は広々としており、正面のカウンターをメインとして椅子とテーブルがまばらに置かれている。カジュアルなカフェの雰囲気である。抹茶のパックも綺麗に陳列され、販売されている。

宇治と鹿児島の厳選した茶葉をブレンドした JAPAN PREMIUM 抹茶をホットでいただく。カウンター中央の釜でお湯が沸いており、柄杓で片口にお湯を注ぎ、一点一点お茶を点てるスタイル。片口から紙コップに抹茶が注がれ完成。仕上がりが茶碗ではなく、紙コップというのが面白い所。妙な和風感を残しすぎず、カジュアルに徹するのは好感が持てる。紙コップでいただく抹茶も美味しい。

知られていないことかもしれないけれど、抹茶も元々は行商や茶屋(現代でいうカフェのようなもの)で飲まれていた庶民のカジュアルなドリンクだった。その後、侘び茶が流行し、禅と結びついて、作法のある現在の茶道に至っている。

抹茶カフェというスタイルは、新しいように見えて、実は懐古的な、先祖返り的なノスタルジーの一つなのかもしれない。当時も疫病が流行ったりしたことだろうから、その合間に薬がわりに抹茶を飲む。時代が変わっても、昔の人と同じように抹茶に癒されている自分がいる。我々が求めるものというのは、本質的には変わっていないのだろう。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

THE MATCHA TOKYO 表参道

渋谷区神宮前6-6-6
11:00~21:00
the-matcha.tokyo

Tokyo Ocha Cafe Story #2:茶茶の間

日本茶のシングルオリジンをいち早く東京で紹介したお店。それが「表参道 茶茶の間」である。それこそ日本茶に対してシングルオリジンという呼び方が無かった頃から、単一農園・単一品種にこだわり日本茶を提供してきた。

表参道駅から表参道を歩いて下り原宿駅とのちょうど中間あたり、道を一本入ってさらにぐるりと回った、ちょっと分かりづらい場所にお店はある。しかし、時間によっては並ばないと入れないこともあるそうなので注意しなければならない。

お店の雰囲気はカフェに近いが、大きく張り出したカウンターが特徴で、そこで店主の和多田さんがお茶を淹れている。和多田さんは常に忙しく動き、急須からガラス容器へ、ガラス容器から湯のみへとお湯とお茶を動かし続ける。一見パフォーマンスに見える派手な動きも、よく見ていると、美味しいお茶を淹れるために考えられた動作であることがわかる。急須は茶葉の広がりを活かせる大ぶりの平形を使用していた。

約30種ある単一農園・単一品種のお茶の中からやぶきた「秋津島」を選び、茶茶の間 呈茶「かさね」で頂く。茶葉をそのまま頂く「テイスティング」から、濃厚な一煎目、グラスで氷と共に冷茶をいただく二煎目、カップで温かな風味を味わう三煎目、たっぷりと味わう四煎目と続く。

全体の流れの完成度にも驚くが、特に感動したのが一煎目。常温でしか出せないはずのシングルオリジンの濃厚な旨味が温茶で出ている。旨味が高温になることで口の中全体に一瞬で広がるという、今までにない不思議な感覚だ。

通常温かさを感じるぐらいのお湯で淹れられた一煎目は旨味も出るのだが、エグ味と苦味も出てしまう。今回頂いた一煎目は温かいにも関わらずエグ味や苦味は一切感じられず、旨味と風味だけが口の中に広がった。これには驚いた。

後で和多田さんに聞くと、淹れる時は常温だが飲むときには温かいお茶になっているとのこと。つまり、常温で淹れられた後、器の移し替えの中で徐々に温度を上げ、口に入るまでに温かなお茶になるという、物凄いテクニックを使っていたわけである。まさに神業。

茶茶の間はスイーツも美味しく、お茶もたっぷりといただけるので、自然に贅沢な時間を過ごすことができるようになる。つまり、お店の中にいるだけで「お茶を楽しむ」という意味が、そのまま体感できる仕組みになっているのだ。煎茶専門カフェの一つの完成系がここにあると言えよう。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

表参道 茶茶の間

渋谷区神宮前5-13-14
月曜・火曜定休・12:00~19:00
chachanoma.com


Tokyo Ocha Cafe Story #1:伍(イツ)

伍(イツと読む)は青山通りから少し脇道を入った、和花屋の2階にある。

予め情報を知らなければ全く気づかずに通り過ぎてしまう。見えているのだけれども視線が止まることはない、そんな店だ。

ドアを開いて急な階段を登り、引き戸を開けると、カウンターが一つ、席は6つだろうか。漆喰が塗られた壁と、障子が張られた窓という最小の表現で和を演出しているが、雰囲気としてはカウンターBARに近い。釜で沸かされた白湯がうすはりグラスで供される。

メニューには10種の全国から集められた茶が並び、大きく煎茶と萎凋煎茶に分類されている。萎凋煎茶は収穫された茶葉を萎れさせることで酸化を進め、香りや味わいを強めた煎茶とのこと。せっかくなので、煎茶から大門茶(だいもんちゃ:岐阜県)と萎凋煎茶から白瑠(はる:埼玉県)の2種を飲み比べてみる。

亭主の玉井さんが武者小路千家で茶道を学んでいたこともあり、湯は茶道用の釜で沸かされ柄杓で取り扱われる。動作は茶道そのもの。宝瓶に茶葉が移され湯冷ましからお湯が注がれる。しばし時間を置き、大門茶の一煎目が入る。

大門茶は幡龍寺の跡地の石垣に沿って生える在来種を手摘みにしたもので、白川茶の起源に当たる希少なお茶。一煎目は柔らかな味で、青くささは無いが独特の香りがある。旨味が押し出して来る感じはないためインパクトは少ないが、スッと飲み込め喉越しが軽い。二煎目で香りの鮮やかさが増す。

白瑠は緑茶とは思えない香りの強さで烏龍茶を思わせる。茎まで付いた大きな茶葉そのままから淹れるのでエグ味が出るかと思いきや、全く渋みや臭みは感じられず鮮やかな香りが鼻孔に広がる。二煎目はお湯の温度が上がる。一煎目では閉じていた蕾が二煎目で花開き、香りがより色鮮やかになる。玉井さんが言うように「何杯でも飲めるお茶」だ。

「ハーブなどの後付けのフレーバーでは無く、茶葉本来の香りを楽しめる店にしたい」と亭主の玉井さん。確かにお店のある表参道近辺はカフェだけでなくお茶の店も多い激戦区。差別化は必要になるだろう。落ち着いた雰囲気の中でお茶の香りを楽しめるお店。生活に香りが必要になったらまた立ち寄ることにしよう。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

伍(イツ)

東京都南青山3-14-4 2F
月曜定休・12:00~19:00