シングル・オリジン・ティーを巡る冒険 #3 : シングル・オリジンと UL NDT その1

静岡市清水区、興津川の上流には「キャンプ適地」と言われる、誰でも無料で泊まれるキャンプ場が2つほどある。無料なので売店があったり、食堂があったりということでは無いが、トイレと水場は付いており、ソロキャンでまったりするにはちょうど良い。むしろ、あまり便利すぎるキャンプ場というのは、便利すぎて何をしに山まで来たのかわからなくなるという矛盾のある場所なのだ。トイレや水場があるということだって、よっぽど贅沢だ。

この日は西里キャンプ適地にテントを張り宿泊しようと考えていた。バスを乗り継ぐつもりが乗り継ぎ先のバスが休日は運行していないということに気づいて唖然としたが、西里温泉の方にバス停まで迎えに来ていただき「やませみの湯」までたどり着き、湯に浸かって一息付いた後、また温泉の方に送っていただき、なんとか西里キャンプ適地へ到着した。旅ではいつも誰かに助けられる。今までの旅では優しさを学んできた。それをいつでも誰かに返せるようにしたいと思うのだが。

日曜の午後だったが、西里キャンプ場には沢山の人が溢れていた。緩やかな流れの川が近いので、テントを貼って夏の終わりの川遊びをしている人が多いようだった。日が傾き始めると、一組、また一組とテントをたたみ、4時を回る頃には私と焚き火をする二人組みの男、二組だけになってしまった。

日が暮れると面倒なので、手早くNemoの二人用テントを張る。ニンジャタープで屋根をかけ終え、気がつくと先ほどの二人組の姿はすでに無くなっていた。キャンプ場には私一人。秋の虫の声が辺り一面を埋めている。

まだ日が残っているうちに、試してみたいことがあった。葉桐さんからお土産でいただいたシングル・オリジンの茶葉があるので、これでシングル・オリジン野点をしてみようと思ったのだ。

一品更屋の野点は、ウルトラライトハイキングの考え方を取り入れている。ULハイクの徹底して無駄を削ぎ落とすという思想が侘び茶の教えと合致しており、現代において野点を行うにはULハイクのストイックさや使う道具を踏襲しないという手はない。もちろん、自由に野に出て歩き回り、気が向くままに茶を点てるには、超軽装の方が勝手が良いという実用的な面も大きい。

ウルトラ・ライト・野点、つまり UL NDT となる。

ヘリノックスのチェアゼロを広げ、SOTOのポップアップ・ソロテーブルを展開する。PRIMUSのバーナーにエバニューのチタンクッカーを乗せ、スノーピークのチタンカップを準備する。茶はシングル・オリジン「やまかい」にしてみる。

最初はお湯で淹れてみることにした。葉桐さんで教わった、皿出しスタイルで淹れてみる。

クッカーの蓋兼フライパンとなる容器に、細く美しい茶葉を広げ、お湯を沸かす。沸騰する前にお湯を止め、茶葉に注ぐ。温度は何度かわからないが、感覚的には80度ぐらいにはなっていただろう。茶葉が開くまで5分ほど待つ。

葉が開ききり、湯が濃い黄色になったところで、カップに注ぐ。専用の容器ではないのでどうしても茶葉がカップに入ってしまう。これは何か対処方法を考えなければいけない。まずは一煎目。

苦い。

味はしっかりと出ているが、エグ味が強すぎる。葉桐さんで頂いた際は温かなお茶でももう少し温度が低かったことを考えると、お湯が熱すぎたのだ。湯冷ましがあった方が良さそうである。一度カップにお湯を入れ湯を冷ましてから茶葉に注ぐ方法が良さそうだ。やまかい自体は味が安定して出ているため、二煎目、三煎目といただく。

小さい頃からお茶は熱いものだと思っていたが、これはどうしたものだろう。葉桐さんでいただいた際のあのお茶の味、その温度。口全体に広がる清涼感をもう一度イメージしてみる。

シングル・オリジン・ティー。どうやら既成概念との戦いが必要なようだ。

つづく

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

シングル・オリジン・ティーを巡る冒険 #2 : 葉桐さんに聞く その2

茶・茶・茶

立て続けにお茶をいただく。全てシングル・オリジン。

こんどうわせ

佐久間

香駿とやまかい

急須を使いぬるま湯で淹れたものも飲ませていただいたが、常温・皿出しの方が美味しく感じる。

摩利支

細かな味の違いはまだ表現できないが、個人的な好みは香駿。やや角がある味だが、爽やかである。

東頭、始まりの味

最後にいただいたのが、今回の目的でもある東頭。こちらも常温・皿出しでいただく。

バランスが良い。他のお茶が何か個性的な、味の角になる部分があるのに対し、東頭は旨味、風味、香り、深み、清涼感と全てのバランスが良く、口のこりが穏やかである。これが静岡のシングル・オリジン、始まりの味である。

もちろん、最初は単一農園・単一品種のお茶は沢山あったのであろう。しかし、大量生産の時代になると、手間がかかる上に少量しか生産できない、効率的ではないこのような生産方法の農園は廃れてしまった。だからこそ、清巳社長は葉桐にしか作れない香味を生産家の皆様と作り続けているのである。

工場の中を見学させていただき、近くの美味しい定食屋でお昼をご馳走になった後、営業の落合さんと共に、実際にシングル・オリジン・ティーが作られている農園を見に行くことになった。

厳しさが美味しさになる

茶園、東頭は標高800メートルの場所にあるという。昼夜の寒暖の差が大きいことが美味しいお茶ができる条件とのことで、東頭も寒暖差が激しく、冬には雪が降り積もるほどの厳しい自然環境だそうだ。

葉桐さんが契約している他のシングル・オリジン・ティーの農園もやはり山の傾斜地にある。平地で大規模な茶園があるような場所はそのために品種改良された茶葉が使われており、厳しい環境のような良い味は出ない。そのためか色や香りなどの誤魔化しが生じる。

「栄西禅師も聖一国師も山の中に茶の種を播いた」と落合さん。日本に茶を持ち込んだ二人がそのような場所に種を播いたのは、中国でも同じような場所で茶が育てられていたからだろう。つまりお茶本来の味というのは、厳しい環境でこそ育まれるものなのだ。手間もかかるし労力もかかる。それでも、そこでしか出せない味がある。

東頭では、一番茶を摘んだ後、茶の木を低く刈りそろえてしまうという。その後は手をかけない。自然そのままで、一年をかけて、木が自らの力で育って行く。昼夜の寒暖差が激しい場所で、夏の日照りを超え、冬の凍てつく寒さを耐えた、厳しい環境の中でもそれでも育とうとする茶の木の力。冬の間蓄えられ、凝縮されたその力が炎のように燃え上がるその瞬間。良い茶とは、そのような生命の輝きの瞬間が凝固した、生命の宝石のようなものなのだろう。

私はそのような景色を美しいと思う。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

シングル・オリジン・ティーを巡る冒険 #1 : 葉桐さんに聞く その1

良い静岡茶とは何か。検索を駆使し探してたどり着いたのがシングル・オリジン・ティー。特に静岡のシングル・オリジン・ティーの中で評価が高いのが築地東頭(とうべっとうと読む)。本山の築地勝美さんが標高800メートルの茶園で育て、摘み、揉んだお茶だ。残念ながら築地さんは亡くなっているらしいが、今は甥御さんが後をついで畑と製法を守っている。

この築地東頭をはじめとする、静岡のシングル・オリジン・ティーを一手に扱っているのが株式会社 葉桐さん。シングル・オリジン・ティーを学ぶためには、まずはこの会社に話を伺ってみたいと考えた。早速葉桐さんに連絡を取り、残暑が残る某日、営業の落合さんと待ち合わせをして、足久保の本社工場へと向かった。

静岡市内から北西の方向へ、安倍川の上流に向かって走り、足久保川に沿って山間部へ入る。足久保川沿いの道の脇には茶園がポツポツと見え、鎌倉時代に聖一国師が播いた茶の子孫達が、今も濃い緑色で日に照らされている。

30分もかからず、葉桐さんの本社工場に到着する。

正面入り口から中へ入り、来客用の商談スペースに通していただく。荷物を降ろして(この日はキャンプ道具とPC2台が入った激重バックパックを持ち歩いていた!)一息付いている所に、Webサイトで見たことのある方が現れた。葉桐清巳社長である。

清巳社長のブログを見て「話を聞いてみたい!」と思っていたが、まさかこんなに早くお会いすることができるとは思わなかった。名刺交換をし席に座る。

席に座るとすぐに、営業の落合さんがお茶を淹れてくれた。淹れると言ってもお皿のような陶器に茶葉を置き、水を注いでいる。急須を使わず、お湯を使わずにお茶が入るのだろうか?

お茶を淹れていただいている間、清巳社長のお話を伺う。

日本茶シングル・オリジンの誕生

シングル・オリジン・ティーという言葉が無かった時代から、清巳社長は山間地の単一品種・単一農園のお茶に拘り続けてきた。清巳さん独特のこの拘りは、東頭の生産者、築地勝美さんとの出会いから始まったそうだ。築地さんの茶の育て方は他の生産者から見ると異質なもので、大量生産へ向かっていた当時のお茶の製法とは真逆といって良いほど大きな違いがあり、理解者は少なかった。畑の作り方や茶の育て方、蒸し方、揉み方まで、日本茶を作る根本が違っていたのだった。

畑に任せる。美味しいお茶は畑でできる。このような考え方は築地さんが畑で実践してきたことだ。この築地さんがいて、築地さんを認め、世に知らしめた清巳社長がいる。この二人の出会いがあり、日本茶シングル・オリジン・ティーが誕生した。

清巳社長の茶に対する考えも築地さんの思想を継いでいる。茶葉は畑で100%になる。あとは減点法でどんどん味が悪くなる。なので、いかにマイナスを作らないかというのが製茶工場の仕事。工場で良い味を作ると言う人もいるがそれは無理だと言う。

清巳社長の凄いところは、美味しいお茶は工場では作れないことを理解しているため、「畑」を徹底していること。契約農家と共に畑の土や肥料、茶の育て方まで、全てにこだわり、畑で美味しさを完成させる。美味しいお茶は畑で作る。非常にシンプルで当たり前のことだが、大量生産とは真逆の考え方のため、単一品種・単一農園のお茶を扱い始めた当初は、茶業に携わる者から理解されることはなかったそうだ。

やまかいをいただく

ここで、一杯目のお茶が出来上がる。「やまかい」。杯に濃い黄色の茶が注がれる。お茶というと緑色という印象だが、蒸しが浅いシングル・オリジンは黄色に仕上がる。

今までお茶で感じたことのない芳醇な香り。ひとくち口に含むと茶葉の味と共に、出汁でも入っているのかというくらい濃厚な旨味が鼻まで抜ける。甘みと塩みはあるが、苦味が全くない。ほんの少しを口に含んだだけなのに、何杯もお茶を飲んだ後のような充実感がある。

「旨い」

これが本当のお茶の味なのだ。

私たちが飲んでいるお茶の味とは何なのか

「大量生産のお茶は味がない。真っ暗な場所で飲んだら水と区別がつかない。」と、清巳社長。特に昭和の高度経済成長期に合わせたように深蒸しのお茶が広まったことで、一般に流通する茶の品質・味は格段とレベルが下がり、さらにペットボトルのお茶が流通するようになったことで、お茶は水のような味だと言う誤解が広がってしまった。

深蒸しはお茶の色は鮮やかで美味しそうに見えるが、茶葉本来の味は無くなっている。風味の消えた美味しいとは言えないお茶を、色々言い方を変えて売ろうとするのは不誠実だし、お茶の未来のためにも良くない。浅蒸しで充分酸化(酸化酵素)を止められており、味も最上のものになっているのだから、それ以上蒸しを入れる必要はない。

味が無くなっているお茶が一般的なお茶として認知された結果、紅茶や珈琲など、味や香りが強い飲料に押され、茶を飲む習慣が薄れた。茶葉の大量生産化に伴い、茶の生産効率は上昇したが、結果として茶の価格が下がる原因にもなってしまった。

逆に考えると、今まで大量に売られてきた粗悪なお茶が消え、淘汰され、本当に美味しいお茶だけが残る瀬戸際に来ているのかもしれない。それが悪いことなのか、良いことなのか、今の私には判断がつかない。

つづく

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

Tokyo Ocha Cafe Story #3:THE MATCHA TOKYO 表参道

表参道は流行の中心だけあって面白い店が多い。そんな街もコロナ禍においては大きなダメージを受けており、裏通りを歩くと空き店舗がチラホラと目立つようになってきた。もともとは休日・平日関わらず圧倒的な人出があったものが、突然客が途絶え、それが長引いている。地価の高さからいったら店舗運営が厳しくなるのも当然だろう。

そんな中で、お茶カフェは頑張っている。表参道は面白いお茶カフェが多い。

THE MATCHA TOKYO は、表参道をはじめ、新宿のNEWoMan、ルクア大阪と、良い場所に出店している人気の店だ。抹茶ドリンクを提供はしていてもオーガニックを扱っている店は東京では少なく、宇治、鹿児島、静岡の茶葉のブレンドというのも珍しい。

打ちっ放しを白く塗りこんだような店内は広々としており、正面のカウンターをメインとして椅子とテーブルがまばらに置かれている。カジュアルなカフェの雰囲気である。抹茶のパックも綺麗に陳列され、販売されている。

宇治と鹿児島の厳選した茶葉をブレンドした JAPAN PREMIUM 抹茶をホットでいただく。カウンター中央の釜でお湯が沸いており、柄杓で片口にお湯を注ぎ、一点一点お茶を点てるスタイル。片口から紙コップに抹茶が注がれ完成。仕上がりが茶碗ではなく、紙コップというのが面白い所。妙な和風感を残しすぎず、カジュアルに徹するのは好感が持てる。紙コップでいただく抹茶も美味しい。

知られていないことかもしれないけれど、抹茶も元々は行商や茶屋(現代でいうカフェのようなもの)で飲まれていた庶民のカジュアルなドリンクだった。その後、侘び茶が流行し、禅と結びついて、作法のある現在の茶道に至っている。

抹茶カフェというスタイルは、新しいように見えて、実は懐古的な、先祖返り的なノスタルジーの一つなのかもしれない。当時も疫病が流行ったりしたことだろうから、その合間に薬がわりに抹茶を飲む。時代が変わっても、昔の人と同じように抹茶に癒されている自分がいる。我々が求めるものというのは、本質的には変わっていないのだろう。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

THE MATCHA TOKYO 表参道

渋谷区神宮前6-6-6
11:00~21:00
the-matcha.tokyo

展示会 2020年 20×20展

静岡伊勢丹7階・ウェルネスパーク GOOD TEA LAB. the SHOP では、10月28日(水)から11月10日(火)までの2週間、「2020年 20×20展」が開催されます。

この展示会では、2020年に顕在化した新しい生活様式「ニューノーマル」な生活において、家で過ごす時間が増えていることを受け、お茶が持っている役割も変化し「ニューノーマルなお茶」へと進化しつつあることを体感いただくことを狙っています。

私たちが考えるニューノーマルなお茶 は、 茶道、煎茶、中国茶、台湾茶、紅茶などの垣根を取り払った「家で楽しむお茶」です。今回は全国の作家、20名に参加いただき、それぞれ「お茶に関する道具」を20点ずつ制作いただきます。家で楽しむ多様なお茶を、それぞれの作家の表現を通し、様々な視点から体感いただけます。

参加作家

青人窯
音喜多美歩
中平美彦
原田譲
二川修
森田みほ
久保駒吉商店 久保建裕

飯高幸作
小野穰
林彩子
フじイまさよ
マルヤマウエア
山﨑美和

上田浩一
久野輝幸
原田奈央
藤村佳澄
三浦愛子
藤原奈津江

公募作家 pottecu

20名・順不同・敬称略

展示概要

 タイトル :2020年 20×20展
 日時 :2020年10月28日(水)-11月10日(火)
 場所 :静岡伊勢丹 7階 ウェルネスパーク GOOD TEA LAB. the SHOP
    静岡県静岡市葵区呉服町1-7 / 電話054-273-4663
 主催 :GOOD TEA LAB.
 ホームページ : GOODTEALAB.JP
 メールアドレス : info@goodtealab.jp


イベント 「ニューノーマル茶会」

2020年 20×20展では、特別企画として TEASONGS 石橋章子が亭主を務める茶会を開催いたします。

外出をできるだけ避け、家の中で過ごす時間を増やす、いわゆるニューノーマルな生活が浸透する中、お茶の楽しみ方も変化しています。

ジャンルにこだわらず、道具に縛られず、自分スタイルで飲むお茶、それがニューノーマルなお茶です。

この「ニューノーマル茶会」では、お客様に好きな道具を選んでいただき、その道具に合わせて亭主がお茶を淹れる・点てるという、ゲスト・ジェネレイテッドなお茶会を実施します。石橋章子の変幻自在なお茶捌きをご堪能ください。

お茶会で選べる道具は今回の「2020年 20×20展」参加作家の作品20点。気になっている作家の道具を実際に使えるチャンスでもあります。

また、お菓子も20種類からお客様が選ぶことができるなど、ゲストが自ら作り上げることができる、ニューノーマル時代の新しいお茶会を体験いただけます。

開催日時・受付

10/31土 11/1日 11/4水 11/7土 11/8日
11:00-12:00 14:00-16:00
2020年 20×20展 会場受付

茶室

宙庵(そらあん):創房 荻須

菓子・お茶受け

和ピクルス専門店 こうのもの
静岡の無添加チョコレートConche(コンチェ)
檸檬とラクダ
おやつ作家 日々
低糖質おやつとコーヒー Locco

茶人

TEASONGS : 石橋章子

呉七クロッシング #1:スノドカフェ 七間町

静岡伊勢丹を出て七間町をふらりと歩き、少し横道を入った場所にそのカフェはある。ハンバーグの美味しいスパーゴやつけ麺専門店のきじ亭などがある一角なので、穴場好きの方なら既にご存知だろう。

スノドカフェは静岡市内に3店舗あるが、他の2店舗は文化会館の中にあるので、個店としてゆっくり楽しめるのは七間町の店になる。外観はカジュアル・シックで、期待できる店構えだ。

店舗に入るとちょっとしたショップスペースがあり、持ち帰りができる焼き菓子やコーヒー豆、器や布ものが販売されている。打ちっ放しの床やむき出しを白で塗り込んだ壁に木製の棚が配置され、ブロカントを使った手作りカフェの雰囲気がある。ショーケースに並んだマフィンがそそる。

店の奥のスペースに入ると、意外と奥行きが広く、厨房に沿ったカウンター席とテーブル・ソファー席が広がっている。そして、その奥にはなんと畳が敷かれた座敷がある。ここで茶会を開いたら面白そうだ、などと考える。

ふらっと町歩きをしてふらっと入れる店というのは、ありそうであんまりない。サードプレイスなんて言い方をされるが、狭すぎると長居しずらいし、広すぎるとどうも煩さを感じてしまう。その点、スノドカフェは規模感が丁度良い。ゆっくりと本を読んで過ごしたい空間がここにはある。そして喧騒がないが故の穴場感。

コロナの影響で今は開催していないようだが、スノドカフェは魅力的なイベントを開催する場所でもある。芸術に関する論議の場を作ったり、壁面を使ってギャラリー的に展示を行ったり、七間町全体を使ったパフォーミングアーツ・イベントを主催したり。このような活動をしている場所、お店があるということは、町にとってすごく重要なことだ。

七間町はかつて芝居小屋が並んだ文化の町であった。その後映画館が並ぶ町になったのだが、今は通りを歩いても文化の香りはあまり感じられない。かすかに感じるその残り香を、火種を絶やさないようにつないでいる。それがスノドカフェだろう。

GOOD TEA LAB. は、お茶に限定してはいるものの、やはり文化を発信する場所である。七間町を文化の町としてさらに盛り上げていく、我々もまたその火付け役の一つになれればと考える。静岡伊勢丹に立ち寄ったら、帰り道にぜひスノドカフェで時間を過ごしてみていただきたい。この穴場感と文化の香りを感じてほしい。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

スノドカフェ 七間町

静岡市葵区七間町7-8
火曜定休・10:00〜24:00
sndcafe.net


Tokyo Ocha Cafe Story #2:茶茶の間

日本茶のシングルオリジンをいち早く東京で紹介したお店。それが「表参道 茶茶の間」である。それこそ日本茶に対してシングルオリジンという呼び方が無かった頃から、単一農園・単一品種にこだわり日本茶を提供してきた。

表参道駅から表参道を歩いて下り原宿駅とのちょうど中間あたり、道を一本入ってさらにぐるりと回った、ちょっと分かりづらい場所にお店はある。しかし、時間によっては並ばないと入れないこともあるそうなので注意しなければならない。

お店の雰囲気はカフェに近いが、大きく張り出したカウンターが特徴で、そこで店主の和多田さんがお茶を淹れている。和多田さんは常に忙しく動き、急須からガラス容器へ、ガラス容器から湯のみへとお湯とお茶を動かし続ける。一見パフォーマンスに見える派手な動きも、よく見ていると、美味しいお茶を淹れるために考えられた動作であることがわかる。急須は茶葉の広がりを活かせる大ぶりの平形を使用していた。

約30種ある単一農園・単一品種のお茶の中からやぶきた「秋津島」を選び、茶茶の間 呈茶「かさね」で頂く。茶葉をそのまま頂く「テイスティング」から、濃厚な一煎目、グラスで氷と共に冷茶をいただく二煎目、カップで温かな風味を味わう三煎目、たっぷりと味わう四煎目と続く。

全体の流れの完成度にも驚くが、特に感動したのが一煎目。常温でしか出せないはずのシングルオリジンの濃厚な旨味が温茶で出ている。旨味が高温になることで口の中全体に一瞬で広がるという、今までにない不思議な感覚だ。

通常温かさを感じるぐらいのお湯で淹れられた一煎目は旨味も出るのだが、エグ味と苦味も出てしまう。今回頂いた一煎目は温かいにも関わらずエグ味や苦味は一切感じられず、旨味と風味だけが口の中に広がった。これには驚いた。

後で和多田さんに聞くと、淹れる時は常温だが飲むときには温かいお茶になっているとのこと。つまり、常温で淹れられた後、器の移し替えの中で徐々に温度を上げ、口に入るまでに温かなお茶になるという、物凄いテクニックを使っていたわけである。まさに神業。

茶茶の間はスイーツも美味しく、お茶もたっぷりといただけるので、自然に贅沢な時間を過ごすことができるようになる。つまり、お店の中にいるだけで「お茶を楽しむ」という意味が、そのまま体感できる仕組みになっているのだ。煎茶専門カフェの一つの完成系がここにあると言えよう。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

表参道 茶茶の間

渋谷区神宮前5-13-14
月曜・火曜定休・12:00~19:00
chachanoma.com


Tokyo Ocha Cafe Story #1:伍(イツ)

伍(イツと読む)は青山通りから少し脇道を入った、和花屋の2階にある。

予め情報を知らなければ全く気づかずに通り過ぎてしまう。見えているのだけれども視線が止まることはない、そんな店だ。

ドアを開いて急な階段を登り、引き戸を開けると、カウンターが一つ、席は6つだろうか。漆喰が塗られた壁と、障子が張られた窓という最小の表現で和を演出しているが、雰囲気としてはカウンターBARに近い。釜で沸かされた白湯がうすはりグラスで供される。

メニューには10種の全国から集められた茶が並び、大きく煎茶と萎凋煎茶に分類されている。萎凋煎茶は収穫された茶葉を萎れさせることで酸化を進め、香りや味わいを強めた煎茶とのこと。せっかくなので、煎茶から大門茶(だいもんちゃ:岐阜県)と萎凋煎茶から白瑠(はる:埼玉県)の2種を飲み比べてみる。

亭主の玉井さんが武者小路千家で茶道を学んでいたこともあり、湯は茶道用の釜で沸かされ柄杓で取り扱われる。動作は茶道そのもの。宝瓶に茶葉が移され湯冷ましからお湯が注がれる。しばし時間を置き、大門茶の一煎目が入る。

大門茶は幡龍寺の跡地の石垣に沿って生える在来種を手摘みにしたもので、白川茶の起源に当たる希少なお茶。一煎目は柔らかな味で、青くささは無いが独特の香りがある。旨味が押し出して来る感じはないためインパクトは少ないが、スッと飲み込め喉越しが軽い。二煎目で香りの鮮やかさが増す。

白瑠は緑茶とは思えない香りの強さで烏龍茶を思わせる。茎まで付いた大きな茶葉そのままから淹れるのでエグ味が出るかと思いきや、全く渋みや臭みは感じられず鮮やかな香りが鼻孔に広がる。二煎目はお湯の温度が上がる。一煎目では閉じていた蕾が二煎目で花開き、香りがより色鮮やかになる。玉井さんが言うように「何杯でも飲めるお茶」だ。

「ハーブなどの後付けのフレーバーでは無く、茶葉本来の香りを楽しめる店にしたい」と亭主の玉井さん。確かにお店のある表参道近辺はカフェだけでなくお茶の店も多い激戦区。差別化は必要になるだろう。落ち着いた雰囲気の中でお茶の香りを楽しめるお店。生活に香りが必要になったらまた立ち寄ることにしよう。

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

伍(イツ)

東京都南青山3-14-4 2F
月曜定休・12:00~19:00


【 公 募 】良茶道具募集!

良いお茶を良い道具で楽しむ。GOOD TEA LAB. は、可能性のある茶道具作家を広く公募いたします。GOOD TEA LAB. の企画に参加してみたい作家の方、GOOD TEA LAB. を通して作品を発表してみたい方は、この機会に是非ご応募ください。

応募いただいた方、全てが展示に参加できるわけではなく、選考の上選ばれた方だけが展示に参加いただけます。あらかじめご了承いただきたくお願いいたします。

応募方法 

インスタグラムで GOOD TEA LAB. をフォロー頂いた上でハッシュタグ「#GTL公募」を付け作品写真を投稿ください。後ほどこちらからメッセージで連絡を取らせていただきます。

またはこのページの下部にある応募フォームに入力の上ご応募ください。

応募期間

2020年9月19日(土)〜 10月11日(日)の約3週間

応募条件

  • 茶道具を作っている作家であること(茶道用の道具、煎茶、中国茶、台湾茶、紅茶など、お茶のジャンルは問いません)
  • 10月20日(火)の時点で、出品・販売可能な作品が20点以上揃っていること
  • 後ほど提示される展示参加条件に合意いただけること

選考方法

応募いただいた方には、インスタグラムのメッセージかメールでご連絡をさせていただきます。その後メッセージかメールで何度かやり取りをさせていただき、総合的に判断させていただきます。

選考結果のお知らせ

選考結果はご本人にメールでお知らせするほか、選考に残った作家様・作品は GOOD TEA LAB. ホームページ、SNSでご紹介させていただきます。

その後、展示参加のご案内をさせていただきます。

フォームからの応募

GOOD TEA LAB. のロゴマークのお話

GOOD TEA LAB. のロゴマークは、25種類の中から選ばれたものです。

文字のみのものや四角いもの、建物みたいなものなど、様々なパターンを作成しましたが、最終的に選ばれたのがこのロゴマークでした。

お茶を飲む器を上から見ると丸いですよね。この丸はお茶の器と、器の中に溜まったお茶の輪郭をイメージしています。最初はグリーンで考えていましたが、お茶=緑は、なにか短絡的な気がしたので黒にしました。

そして丸を形作る線は微妙に太さが違います。これは完全な円のようにキチッと固定されているのではなく、外からも中からも、いろいろな波がおきていることを示しています。GOOD TEA LAB. という器にはいろんな人や物が出入りしていて、不定形なんだけど安定している。そんなイメージです。

そして真ん中にTEA=お茶を置いています。これはお茶が真ん中にあることで生活が豊かになることを意味しています。また、お茶にペンで勢いよく丸をつけたようにも見えます。「良いお茶だ!丸!」という感じです。

完成してみると、ハンコのようでもありますよね。このロゴマークが付いている作品や商品は、良いものであるという印のよう。GOOD TEA LAB. が品質だけではなく、暮らしに良いものを保証する。そんな風に見てもらえたら嬉しいです。