シングル・オリジン・ティーを巡る冒険 #1 : 葉桐さんに聞く その1

良い静岡茶とは何か。検索を駆使し探してたどり着いたのがシングル・オリジン・ティー。特に静岡のシングル・オリジン・ティーの中で評価が高いのが築地東頭(とうべっとうと読む)。本山の築地勝美さんが標高800メートルの茶園で育て、摘み、揉んだお茶だ。残念ながら築地さんは亡くなっているらしいが、今は甥御さんが後をついで畑と製法を守っている。

この築地東頭をはじめとする、静岡のシングル・オリジン・ティーを一手に扱っているのが株式会社 葉桐さん。シングル・オリジン・ティーを学ぶためには、まずはこの会社に話を伺ってみたいと考えた。早速葉桐さんに連絡を取り、残暑が残る某日、営業の落合さんと待ち合わせをして、足久保の本社工場へと向かった。

静岡市内から北西の方向へ、安倍川の上流に向かって走り、足久保川に沿って山間部へ入る。足久保川沿いの道の脇には茶園がポツポツと見え、鎌倉時代に聖一国師が播いた茶の子孫達が、今も濃い緑色で日に照らされている。

30分もかからず、葉桐さんの本社工場に到着する。

正面入り口から中へ入り、来客用の商談スペースに通していただく。荷物を降ろして(この日はキャンプ道具とPC2台が入った激重バックパックを持ち歩いていた!)一息付いている所に、Webサイトで見たことのある方が現れた。葉桐清巳社長である。

清巳社長のブログを見て「話を聞いてみたい!」と思っていたが、まさかこんなに早くお会いすることができるとは思わなかった。名刺交換をし席に座る。

席に座るとすぐに、営業の落合さんがお茶を淹れてくれた。淹れると言ってもお皿のような陶器に茶葉を置き、水を注いでいる。急須を使わず、お湯を使わずにお茶が入るのだろうか?

お茶を淹れていただいている間、清巳社長のお話を伺う。

日本茶シングル・オリジンの誕生

シングル・オリジン・ティーという言葉が無かった時代から、清巳社長は山間地の単一品種・単一農園のお茶に拘り続けてきた。清巳さん独特のこの拘りは、東頭の生産者、築地勝美さんとの出会いから始まったそうだ。築地さんの茶の育て方は他の生産者から見ると異質なもので、大量生産へ向かっていた当時のお茶の製法とは真逆といって良いほど大きな違いがあり、理解者は少なかった。畑の作り方や茶の育て方、蒸し方、揉み方まで、日本茶を作る根本が違っていたのだった。

畑に任せる。美味しいお茶は畑でできる。このような考え方は築地さんが畑で実践してきたことだ。この築地さんがいて、築地さんを認め、世に知らしめた清巳社長がいる。この二人の出会いがあり、日本茶シングル・オリジン・ティーが誕生した。

清巳社長の茶に対する考えも築地さんの思想を継いでいる。茶葉は畑で100%になる。あとは減点法でどんどん味が悪くなる。なので、いかにマイナスを作らないかというのが製茶工場の仕事。工場で良い味を作ると言う人もいるがそれは無理だと言う。

清巳社長の凄いところは、美味しいお茶は工場では作れないことを理解しているため、「畑」を徹底していること。契約農家と共に畑の土や肥料、茶の育て方まで、全てにこだわり、畑で美味しさを完成させる。美味しいお茶は畑で作る。非常にシンプルで当たり前のことだが、大量生産とは真逆の考え方のため、単一品種・単一農園のお茶を扱い始めた当初は、茶業に携わる者から理解されることはなかったそうだ。

やまかいをいただく

ここで、一杯目のお茶が出来上がる。「やまかい」。杯に濃い黄色の茶が注がれる。お茶というと緑色という印象だが、蒸しが浅いシングル・オリジンは黄色に仕上がる。

今までお茶で感じたことのない芳醇な香り。ひとくち口に含むと茶葉の味と共に、出汁でも入っているのかというくらい濃厚な旨味が鼻まで抜ける。甘みと塩みはあるが、苦味が全くない。ほんの少しを口に含んだだけなのに、何杯もお茶を飲んだ後のような充実感がある。

「旨い」

これが本当のお茶の味なのだ。

私たちが飲んでいるお茶の味とは何なのか

「大量生産のお茶は味がない。真っ暗な場所で飲んだら水と区別がつかない。」と、清巳社長。特に昭和の高度経済成長期に合わせたように深蒸しのお茶が広まったことで、一般に流通する茶の品質・味は格段とレベルが下がり、さらにペットボトルのお茶が流通するようになったことで、お茶は水のような味だと言う誤解が広がってしまった。

深蒸しはお茶の色は鮮やかで美味しそうに見えるが、茶葉本来の味は無くなっている。風味の消えた美味しいとは言えないお茶を、色々言い方を変えて売ろうとするのは不誠実だし、お茶の未来のためにも良くない。浅蒸しで充分酸化(酸化酵素)を止められており、味も最上のものになっているのだから、それ以上蒸しを入れる必要はない。

味が無くなっているお茶が一般的なお茶として認知された結果、紅茶や珈琲など、味や香りが強い飲料に押され、茶を飲む習慣が薄れた。茶葉の大量生産化に伴い、茶の生産効率は上昇したが、結果として茶の価格が下がる原因にもなってしまった。

逆に考えると、今まで大量に売られてきた粗悪なお茶が消え、淘汰され、本当に美味しいお茶だけが残る瀬戸際に来ているのかもしれない。それが悪いことなのか、良いことなのか、今の私には判断がつかない。

つづく

一品更屋 更屋松柏

* このコラムは更屋松柏の個人的な意見に基づくもので、関係する企業・団体・個人の意見とは異なります。このコラムに関するご意見・ご質問は一品更屋までご連絡をお願い致します。

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